
CPUはスペック表だけで選ぶものではありません。半年後、自分のPCに腹を立てるか、快適さに感動するかを分けるのは、実際の使い勝手です。そんな中、AMD Ryzen 7 と Intel Core i5/Core i7 の対決は、多くの人が思っている以上に面白い局面を迎えています。これまでの常識は、すでに古くなっているかもしれません。
AMDが短期間で状況を一変させました。コア数やクロックの議論をしている間に、ベンチマークを塗り替えるだけでなく、圧倒的な性能のプロセッサーをリリースしています。Ryzen 7 9800X3D は、Intelのハイエンドなゲーミング向けCPUを上回るだけでなく、2倍以上の速度を実現しています。30%の性能差は、最上位のIntel CPUでさえ見劣りするほどです。
ただし話はそう単純ではありません。Core i5-13600K は約36,000円で、ほとんどのユーザーがゲームで満足できる性能を提供します。Core i7-13700K(約54,000円) は、コンテンツクリエイターが必要とする強力なコアを多数備えています。Ryzen 7 7700X(約54,000円) はその中間的な立ち位置で、驚くような価値を提供する可能性があります。
最終的に重要なのは、どのCPUがベンチマークで最速か、という一点ではありません。普段の作業内容、予算、そして各プラットフォームの癖とどう付き合うかによって変わります。どのプロセッサーにも長所と短所があり、それぞれのユーザーの用途によって選ぶべき一台は異なります。

ゲーミング性能の現実チェック
かつてはIntelがゲーミング性能で大きくリードしていましたが、いまは状況が変わりました。AMDのX3D搭載プロセッサーは信じがたいほど優秀であり、ゲームの勢力図を塗り替えています。とりわけ Ryzen 7 9800X3D は、Intelのハイエンドなゲーミング向けCPUを上回るばかりか、それらを過去のものにしつつあります。
| プロセッサー | CPU Markスコア | シングルスレッド | Core i7-13700K比 | 価値スコア |
|---|---|---|---|---|
| Intel i7-13700K | 45,911 | 4,334 | 0%(基準) | 143.5 |
| Intel i5-13600K | 37,697 | 4,126 | -17.9% | 166.1 |
| AMD Ryzen 7 7700X | 35,798 | 4,189 | -22.0% | 148.3 |
| AMD Ryzen 7 5800X3D | 28,307 | 3,234 | -38.3% | 37.7 |
| AMD Ryzen 7 8745HS | 29,225 | 3,771 | -13.0% | NA |
Ryzen 7 9800X3Dは、CPU負荷が高いことで知られる Baldur’s Gate 3 で 160FPS を記録します。かつての王者 7800X3D は 126FPS にとどまり、実プレイで体感できる約27%の伸びです。Dragon’s Dogma 2 でも 9800X3D は前世代比で約16%高速で、こうしたCPUボトルネックが出やすいタイトルでは Intelのチップは太刀打ちできていません。
Starfield では 9800X3D が 169FPS、7800X3D が 145FPS。Starfield はCPUボトルネックが顕在化しやすいタイトルで、これは単なるベンチマークの数値差ではありません。実際に配信(ストリーミング)やDiscord、バックグラウンドで複数のChromeタブを開いた状態でもフレームレートに余裕が生まれ、描画がいっそう滑らかになります。
Intel Core i5-13600K と Core i7-13700K は、いまでもゲームで優れた性能を発揮します。ただし、着実にゴールラインを押し上げている AMD に対しては一歩遅れを取っています。シングルスレッド性能は i5-13600K:4,126/i7-13700K:4,334。この水準であれば現行タイトルを問題なく動かせます。実ゲームでの差は小さく、多くのタイトルで 3〜5FPS 程度です。
一方、Ryzen 7 7700X のゲーム性能も興味深い位置づけです。シングルスレッド 4,189 とIntelとほぼ同等ですが、9800X3D を「ゲーミング特化」たらしめる 3D V-Cache は非搭載です。実際の使用感では、7700Xは多くのゲーマーにとってIntelとほぼ同等のプレイ体験を提供します。
| ゲームタイトル | AMD 9800X3D | AMD 7800X3D | Intel i7-13700K | Intel i5-13600K | 9800X3Dの向上率(対7800X3D) |
|---|---|---|---|---|---|
| Baldur’s Gate 3 | 160 FPS | 126 FPS | ~115 FPS | ~110 FPS | 7800X3D比+26.9% |
| Dragon’s Dogma 2 | 145 FPS | 125 FPS | ~105 FPS | ~100 FPS | 7800X3D比+16% |
| Starfield | 169 FPS | 145 FPS | ~130 FPS | ~125 FPS | 7800X3D比+16.6% |
| F1 24 | 285 FPS | 265 FPS | ~250 FPS | ~245 FPS | 7800X3D比+7.5% |
もう一つの注目点はフレームタイムの安定性です。AMDのX3D搭載CPUは高い平均フレームレートに加え、フレーム配信の一貫性にも優れます。ゲームの滑らかさをより正確に示す 1%および0.1%最低フレームレートを見ると、Ryzen 7 9800X3D は他のCPUを大きく上回ります。これは、スタッターや入力遅延の減少、そして全体的に高い応答性につながります。
マルチコア性能:Intelの反撃
| プロセッサー | 価格 | コア/スレッド | ベースクロック | 最大ブースト | L3キャッシュ | TDP | ソケット |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| Intel i7-13700K | 16C/24T | 3.4 GHz | 5.4 GHz | 30MB | 125W | LGA1700 | |
| Intel i5-13600K | 14C/20T | 3.5 GHz | 5.2 GHz | 24MB | 125W | LGA1700 | |
| AMD Ryzen 7 7700X | 8C/16T | 4.5 GHz | 5.4 GHz | 32MB | 105W | AM5 | |
| AMD Ryzen 7 5800X3D | 8C/16T | 3.4 GHz | 4.5 GHz | 96MB | 105W | AM4 | |
| AMD Ryzen 7 8745HS | 8C/16T | 3.8 GHz | 4.9 GHz | 16MB | 35-54W | FP8 |
Intelの強みは、いまなおマルチコア性能で確認できます。Core i7-13700K は 16コア/24スレッド 構成で CPU Markスコア 45,911。重いマルチスレッド系ワークロードに最適なプロセッサーです。Core i5-13600K も 14コア/20スレッド で 37,697 を記録し、純粋なスループットではAMDの8コア級を上回る場面が多いです。
AMDのRyzen 7 7700X は 8コア/16スレッド にもかかわらず CPU Mark 35,798 と良好。AMDはコア数が半分であるにもかかわらず、Intelのi7プロセッサーより78%高速です。これはZen 4アーキテクチャの改善とAMDの高クロック処理能力を示しています。
Ryzen 7 5800X3D は一種のケーススタディ。CPU Markスコア 28,307 だけを見れば最新世代に劣りますが、このチップは汎用のマルチコア性能ではなくゲーム性能に最適化されています。96MBの大容量L3キャッシュによりゲームで強みを発揮する一方、キャッシュミスのペナルティが響く作業系タスクでは不利になることがあります。
コンテンツ制作系ワークロード(動画エンコード、3Dレンダリング、コードコンパイルなど)では、総合差は大きくないものの、コア数の多いIntelが有利に働きやすい傾向です。たとえば Adobe Premiere Pro では、同クラス比較でIntelがおおむね10%リードするケースが見られます。ただし、その性能優位は消費電力増とトレードオフになりがちです。
とくにBlenderのレンダリングのように、コア数が増えるほど処理が楽になるタスクでは、Core i7-13700K のアプローチが明らかに効果的です。レンダリングに長時間を要しがちな3D制作では、8コアのAMDよりも短時間で完了するケースが多く、Core i5-13600K でも8コアAMDを上回る場面があります(もっとも、差はタスクや設定によって小さくなることもあります)。
一方で Photoshop を使用した場合は様相が大きく異なります。多くの処理が短いスレッドを素早く回す性質を持つため、AMD―とりわけ Ryzen 7 9800X3Dで高速に動く場面が目立ちます。実際のクリエイティブ作業では、Zen 5の改良により、AMDの8コアがIntelの16コアに匹敵、あるいは上回る性能を発揮できます。
消費電力:性能の隠れたコスト
| プロセッサー | TDP | 年間消費電力 (目安) | 性能/ワット | 冷却要件 |
|---|---|---|---|---|
| Intel i7-13700K | 125W | 91.3 | 367 | ハイエンドクーラー |
| Intel i5-13600K | 125W | 91.3 | 302 | ハイエンドクーラー |
| AMD Ryzen 7 7700X | 105W | 76.6 | 341 | ミドルレンジクーラー |
| AMD Ryzen 7 5800X3D | 105W | 76.6 | 270 | ミドルレンジクーラー |
| AMD Ryzen 7 8840HS | 28W | 20.4 | 1,011 | パッシブ冷却 |
| AMD Ryzen 7 8745HS | 45W | 32.9 | 287 | ミドルレンジクーラー |
これらのプロセッサーの消費電力差は想像以上に大きいです。Intel Core i5-13600K と Core i7-13700K はいずれも TDP 125W ですが、高負荷時にはそれ以上の電力を消費する場合があります。対して AMD Ryzen 7 は通常 105Wで動作し、モバイル向けの Ryzen 7 8840HS はわずか 28Wまで下がります。
ワットあたりの性能(効率)に目を向けると、話はさらに興味深くなります。一般に AMDのプロセッサーは、同じ電力でより多くの処理をこなす傾向があります。実際には、電気代の抑制・発熱の低減・静音冷却につながり、PCのライフサイクル全体で大きなコスト削減をもたらす可能性があります。
冷却要件にも、この消費電力の違いが現れます。IntelのCPUは高負荷時にブーストクロックを安定維持するため、より強力な冷却を必要とする場合があります。いっぽう AMD(特に Zen 4/Zen 5) は、比較的手頃な空冷クーラーでも問題ないケースが多いのが特徴です。
AMD最新世代のポイントは熱設計の改善です。Ryzen 7 9800X3D では、キャッシュダイと基板の間に余裕を持たせ、CPUコアが統合ヒートスプレッダー直下に配置されています。これにより熱の逃げ道が改善され、高いクロックを維持しやすくなった―これが世代あたりの大きな性能向上の背景の一つです。
オーバークロックの余地も世代・製品で異なります。以前は一部のX3Dモデルでオーバークロックが制限されていましたが、9800X3Dはフル機能のオーバークロックに対応します。Intel K シリーズもオーバークロックは可能ですが、アイドル時の消費電力が高めになりやすいため、熱的余裕はなくなります。

プラットフォーム特性:長期的な視点
| 項目 | Intel LGA1700 | AMD AM5 | AMD AM4 |
|---|---|---|---|
| メモリ対応 | DDR4/DDR5 | DDR5 | DDR4 |
| PCIeバージョン | PCIe 5.0(20レーン) | PCIe 5.0(24レーン) | PCIe 4.0(20レーン) |
| プラットフォーム寿命 | 2022-2024年 | 2022-2025年以上 | 2017-2024年 |
| アップグレードパス | 限定的 | 優秀 | まもなく終了 |
| マザーボード価格帯 | 約15,000~122,000円 | 約19,000~133,000円 | 約9,000~78,000円 |
| 最大メモリ速度 | DDR5-5600 | DDR5-6000+ | DDR4-3200 |
おすすめ記事:購入ガイド:DDR4 vs DDR5
プロセッサー選びでプラットフォームが重要なのは、その寿命が将来のアップグレード性を左右するからです。AMDのAM5 ソケットは複数世代にわたっての利用を前提に設計されており、Ryzen 7 7700X をはじめ新しいCPUにも対応します。つまり、マザーボードやメモリなどをそのままに、CPUだけを交換することができます。
一方、IntelのLGA1700 は Core i5-13600K/Core i7-13700K をサポートしますが、過去の例からAM5ほど長く使える可能性は低いでしょう。Intelは数世代ごとに新ソケットへ移行するため、より高性能なCPUを入手するにはプラットフォーム全体をアップグレードする必要があります。
メモリ対応もプラットフォームごとに異なります。AMDのAM5 は DDR5 をネイティブサポートし、最大 5600MT/s をサポートします(OC すればさらに高クロックも狙えます)。Intel 第13世代 Core もDDR5に対応していますが、DDR4対応マザーボードも用意されており、予算重視のビルダーにとって選択肢が広いのが利点です。
また、PCIeレーン構成と接続オプションもプラットフォームで異なります。IntelプラットフォームはCPU直結で PCIe 5.0 を20レーン、AMDプラットフォームはプロセッサー直結で PCIe 5.0 を24レーン提供します。一般ユーザーにとっては影響は小さいものの、複数GPUや多数のNVMeドライブを搭載するハイエンド・ワークステーションでは重要な違いになります。
機能や拡張性は、各プラットフォームを支えるチップセットのエコシステムによって左右されます。AMD なら X670E/B650E、Intel なら Z790/B760 といったチップセットがあり、それぞれ価格帯や搭載機能が異なります。USBポートの数や内蔵Wi-Fiの有無・規格まで、これらの違いが提供される機能全般に影響します。
コストパフォーマンス:真の価値を求めて
| 価格 | プロセッサー | 性能ティア | 最適用途 | 価値評価 |
|---|---|---|---|---|
| 約53,000円 | i5-13600K | 高性能 | ゲーミング+軽度クリエイティブ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
| 約80,000円 | Ryzen 7 7700X | 高性能 | バランス型用途 | ⭐⭐⭐⭐ |
| 約80,000円 | i7-13700K | フラッグシップ | 重いマルチタスキング | ⭐⭐⭐⭐ |
| 約120,000円 | 9800X3D | ゲーミングフラッグシップ | 究極のゲーミング | ⭐⭐⭐ |
| 約82,000円 | 5800X3D | ゲーミング特化 | 純粋なゲーミング最適化 | ⭐⭐ |
| / | 8745HS | アッパーミドルレンジ | ポータブルパワー/バランス型小型フォームファクター | ⭐⭐⭐⭐ |
CPU市場における「価値」は、想像以上に複雑です。約53,000円の Intel Core i5-13600K は、価値スコア 166.1 と高評価で、費用対効果に優れた有力候補の一つです。今回の主要比較対象外ではあるものの、AMD Ryzen 5 7600X の価値スコア 167.6を見ると、ミドルレンジ帯の競争の熾烈さが分かります。
Intel Core i7-13700K の価値スコア 143.5は、追加コストに見合う価値があることを示しています。ただし、すべてのユーザーに当てはまるわけではありません。レンダリングや重いマルチスレッド処理で追加コアが必要なユーザーにとっては最適ですが、そうでなければi5の性能で十分というユーザーもいると思います。
約79,000円の AMD Ryzen 7 7700X は、価値スコア 148.3。価格・価値の両面で Core i5 と Core i7 の中間に位置します。i5と比べると8コア/16スレッドを備え、高いIPCとクロックにより、多くの場面で性能差を埋められます。
Ryzen 7 5800X3D は少し特殊な位置づけです。約82,000円/価値スコア 37.7 と表面上は見劣りしますが、そのゲーミング性能が弱点を補っています。価格は高めでも、妥協なきゲーム体験を求めるなら選ぶ理由があります。
総合的な価値はプラットフォームコストにも左右されます。AMD AM5 ではDDR5メモリが前提でコストが上がりがち。一方、IntelプラットフォームはDDR4互換を選べるため、予算重視の自作ではシステム全体の費用を抑えやすい側面があります。もっとも、DDR5価格はこの一年で大きく下落しており、この優位性は以前ほど有効ではなくなっています。
実際のアプリでの性能
ゲームの数値は、あくまで全体の一部に過ぎません。コンテンツクリエイターにとっては、各プロセッサーがストリーミング/動画編集/その他のクリエイティブ作業をどう処理するかが重要です。Core i7-13700K(16コア) は Adobe Premiere Pro で大きな伸びを見せ、特にタイムラインのスクラブやエフェクト適用で効果的。コアが多い分、編集の応答性を保ちながらバックグラウンド処理を並行しやすくなります。
ゲーム配信では、興味深い差が表れます。AMDのX3D搭載モデルは、配信エンコード中でもフレームレートを落としにくい傾向があります。これは、メモリサブシステムの強化と、ゲーム負荷に対するキャッシュ活用の最適化が効いているためです。
コードコンパイルと開発ワークフローでは、「コアは多いほど有利」という単純な話にはなりません。現在のツール群は、多数の低速コアより少数の高速コアを活かしやすい設計が多く、この点で高クロック少コアを重視するAMDの戦略は理にかなっています。
仮想マシンの実行においては、より多くのコアを持つIntelプロセッサーが優位です。Intelが提供する追加スレッドは、複数のVMやコンテナの実行に有用です。しかし、単一の仮想マシンでは、コアあたりの性能が高いため、AMDプロセッサーの方が優れた性能を発揮することが多いです。
データベースおよびサーバー系ワークロードは混在した結果になります。AMD は一般にインタラクティブなクエリで応答が速く、Intel は高度に並列化された処理に適する傾向。どちらが最適かは、使うDBソフトと作業条件次第です。
アーキテクチャの詳細分析
| アーキテクチャ機能 | Intel第13世代 | AMD Zen 4 | AMD X3D |
|---|---|---|---|
| コア設計 | ハイブリッド(P+Eコア) | ホモジニアス | ホモジニアス+3Dキャッシュ |
| 製造プロセス | Intel 7(10nm相当) | TSMC 5nm | TSMC 5nm |
| コアあたりL2キャッシュ | 1.25-2MB | 1MB | 1MB |
| L3キャッシュ合計 | 24-30MB | 32MB | 96MB |
| メモリコントローラー | デュアルチャネルDDR5 | デュアルチャネルDDR5 | デュアルチャネルDDR4/5 |
| 内蔵グラフィックス | Intel UHD 770 | AMD Radeon | AMD Radeon |
| オーバークロック対応 | フル(Kシリーズ) | フル | 限定的(X3D) |
これらのプロセッサー間のアーキテクチャ差を理解すると、その動作原理が見えてきます。Intel 第13世代はハイブリッド構成で、パフォーマンスコア(Pコア)とエフィシエンシーコア(Eコア)を併載。Core i5-13600K は Pコア6+Eコア8、Core i7-13700K は Pコア8+Eコア8 を備え、同一CPU内でシングルスレッドとマルチスレッドの両性能を引き上げる設計です。
対して AMD Zen 4 は、すべてのコアが同一仕様で高性能を発揮できるホモジニアス(均質)コア戦略を採用。Ryzen 7 7700X は8コアすべてが条件次第で最大 5.4GHzまでブーストでき、全スレッドで揃った性能を期待できます。これは、理論上の最大スループットよりも予測可能で一貫したパフォーマンスを重視する設計思想です。
キャッシュ階層も両者で大きく異なります。Intel はコア当たりのL2が比較的大きい一方で、総L3は控えめ。たとえば i7-13700K は L2 24MB/L3 30MB。AMD はL2が小さめな代わりに、L3を厚く取る傾向があり、7700X は L2 8MB/L3 32MB を搭載します。
さらに AMDのX3D 系は 3D V-Cache による積層キャッシュという新機軸を採用。ダイ上に追加キャッシュを重ねることで、Ryzen 7 5800X3D は L3 合計 96MB という大容量を実現します。キャッシュミスが性能低下を招きやすいゲーミング系ワークロードにおいて、この仕組みは理想的に働きます。
ファブリック/メモリコントローラーの動作も性能に影響します。AMD は高速DDR5でとくに好成績を示し、Infinity Fabric とメモリ速度の連携調整が効きます。一方、Intel のリングバス・アーキテクチャはメモリ速度の影響を受けにくく、レイテンシ特性が安定しやすいのが特長です。
投資の将来性
技術の進化は速く、今日のハイエンドが明日のミドルレンジになることも珍しくありません。AMDは少なくとも2025年まではAM5ソケットを継続サポートすると明言しており、将来のアップグレードが容易です。たとえばいま Ryzen 7 7700X を購入しても、マザーボードやメモリ、クーラーをそのままにCPUだけ次世代へ載せ替えられる可能性があります。
一方で、Intelのプラットフォーム戦略はAMDより読みづらい状況です。LGA1700 は現行の第13世代Coreに対応しますが、Intelは世代交代のタイミングで新ソケットへ移行する傾向があり、次のCPUアップグレードではプラットフォーム一式の更新が必要になる場合があります。
ソフトウェア最適化の潮流は、AMDのアーキテクチャ寄りに向かいつつあります。ゲーム開発者やアプリケーション開発者は、多数の低速コアよりも少数の高クロックコアを前提に最適化する傾向が強まっています。こうした前提に立つと、AMDの8コアCPUは、多数のEコアを抱えるIntelのハイブリッド設計よりも長く使える可能性があります。
またコンシューマー用途でもAI/機械学習ワークロードが一般化しつつあります。AMDとIntelはいずれもAIアクセラレーションをCPUに実装していますが、アプローチは異なるため、クリエイティブ/生産性ソフトでAI機能が普及するほど、この差異の理解が重要になります。
最後に、電力効率の観点です。モバイルコンピューティングの拡大と電気料金の上昇を背景に、効率性に優れるAMDの設計は長期的優位につながる可能性があります。現時点で効率面に強みを持つAMDは、長期的な価値という点でも有望と言えるでしょう。
Ryzen 7 vs Core i5 vs Core i7:ニーズに合った最適な選択
| 用途 | プロセッサー | 代替候補 | 選択理由 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|
| ゲーミング | AMD 9800X3D | AMD 7800X3D | ゲーミング性能で30%以上の優位性 | ハイエンド |
| ゲーミング + 予算重視 | Intel i5-13600K | AMD Ryzen 7 7700X | 最高のコストパフォーマンス | ミドルレンジ |
| コンテンツ制作 | Intel Core i7-13700K | AMD Ryzen 9 7950X | マルチコア性能が高く、エンコード/レンダリングで有利 | プロフェッショナル |
| ストリーミング + ゲーミング | AMD Ryzen 7 9800X3D | AMD Ryzen 7 7700X | 配信エンコード併用時でもゲームFPSを保ちやすいバランス | ハイエンド |
| オフィス作業 | Intel Core i5-13600K | AMD Ryzen 7 7700X | 日常業務に十分な処理性能とコストのバランス | ビジネス |
| モバイルコンピューティング | AMD 8840HS | Intel i5-1340P | 電力効率を最優先 | ノートPC |
Ryzen 7 vs Core i5 vs Core i7:最適なCPUは、ユーザーのニーズと優先事項によって決まります。

AMD Ryzen 7 9800X3Dは価格こそ高めですが、最高のゲーミング性能を求めるユーザーには有力な選択肢です。ゲーミング性能の伸びは顕著で、今後数年にわたって優位性を維持することが期待されます。
Intel Core i7-13700Kは、マルチスレッド対応アプリを使うコンテンツクリエイター向け。動画編集や3Dレンダリングなどで追加コアの恩恵が大きく、生産性最優先のプロ用途なら消費電力の高さも受け入れやすいでしょう。
コストを抑えつつ総合力を重視するなら、Intel Core i5-13600K が有力。約53,000円という価格ながら十分なコア数を備え、高価なCPUに匹敵するゲーム性能を発揮します。
長期的な互換性と高効率を重視する場合は、AMD Ryzen 7 7700X を推奨します。AM5プラットフォームは明確なアップグレードパスを提供し、その効率性は静音・低温なシステム構築に向きます。
最適な選択は、目先の性能だけでなく今後数年にわたる使用を考慮すべきです。ワークロード、予算、プラットフォーム要件への許容度を総合的に判断することが大事です。
今回の比較が示すとおり、各プロセッサーはそれぞれ別の領域で力を発揮する傾向があります。これらの特性を理解することが、自分のニーズに最適な1台を選ぶ近道です。






コメントを残す