大型デスクトップPCの買い替えを検討する際、ビジネスやサイドビジネスのために小型PCが適しているかどうか考えるのは当然のことです。結論から申し上げますと、ほとんどの用途で小型PCは十分対応可能です。ただし、全てのソフトウェアが小型PCで動作するというわけではありません。PCのサイズに関係なく、大規模なデータ処理や計算処理を必要とするビジネスソフトウェアは、動作に支障をきたす可能性があります。
ビジネス用途向けに開発された多くのアプリケーションは、十分なスペックを備えた小型PCでも問題なく動作します。ここで、ミニPCでの動作に制限がある、あるいは全く動作しない可能性のあるアプリケーションについて説明しましょう。
まず、オペレーティングシステムについてですが、Mac OSは小型PCでは動作しません。一方、Windows Server 2022やLinuxなどの他のOSは、十分なメモリとRAMを搭載していれば安定して動作します。特に要求の厳しいアプリケーションを使用する場合は、大容量のメモリとRAMでミニPCを強化する必要があるかもしれません。
また、PCIスロットに装着するアダプターカードなど、特殊なハードウェア構成を必要とする業務用アプリケーションは、小型PCでは拡張性の制限により実行できません。ただし、POS(販売時点情報管理)システムなどで使用される周辺機器は、ミニPCでも利用可能です。例えば、USBバーコードスキャナー、USBレシートプリンター、USBキャッシュドロワー、タッチスクリーンモニター、USBスキャナー、その他多数のUSBやBluetoothデバイスが使用できます。
多くの業務用アプリケーションは、適切に設定されたミニパソコンで問題なく動作します。例えば、高度なハードウェア要件を必要としない製造現場の管理システムや、複数ユーザーの同時アクセスに対応する物流・ワークフローアプリケーションなどが該当します。また、近年はクラウドベースのビジネスアプリケーションも増えており、PCへの負荷が軽減される傾向にあることも覚えておくとよいでしょう。
ビジネスソフトウェアが必要な理由
「ビジネス」という言葉は非常に広範な活動を含むため、ビジネスソフトウェアを一概に定義することは困難です。例えば、手作り工芸品の制作・販売は、その規模や販路によって趣味にもビジネスにもなり得ます。お菓子作りも同様です。とはいえ、これらの活動を管理するためには何らかのソフトウェアが必要です。必ずしも高価なアプリケーションである必要はありませんが、業務管理のためのツールは不可欠です。
最も手軽な方法として、Excelなどのスプレッドシートを使用して、仕入れ、顧客情報、収支などを管理する方法があります。また、WordやGoogle Docsなどのワープロソフトを使用して、請求書やその他の文書を作成することもできます。これらの機能は、Microsoft Officeで簡単に実現できます。予算に制約がある場合は、MS Wordと互換性があり、類似のインターフェースと機能を提供する無料のオープンソースオフィススイート「LibreOffice」も選択肢の一つです。これらのソフトウェアは小型パソコンでも快適に動作し、小規模ビジネスの運営に必要な機能を手頃な価格で提供します。さらに、これらのアプリケーションは操作が簡単で、短時間で習得できるという利点もあります。
財務ソフトウェア
中小企業の大半は、専用の財務ソフトウェアを必要としています。本格的なビジネスを展開する場合、通常は一般帳簿(General Ledger)、売掛金・請求書管理(Accounts Receivable)、買掛金管理(Accounts Payable)、さらには給与計算(Payroll)などの機能を備えた本格的な会計ソフトウェアが求められます。また、在庫管理や注文管理など、業態によって必要となる管理機能もあります。小型パソコンは、ビジネスの規模や必要とされるストレージ容量、同時利用者数に応じて、これらの機能の一部または全てを実行することが可能です。近年では、顧客関係管理(CRM)やデータベース管理の需要も高まっています。
代表的な会計ソフトウェアとしては、小規模ビジネスで最も普及しているQuickBooksや、同様の小規模ビジネス向けパッケージであるXeroが挙げられます。また、Zohoも検討に値するソフトウェアです。Zohoは財務会計やCRMなど、多様なアプリケーションや機能を提供する国際的なソフトウェア企業です。他の小規模ビジネス向けソフトウェアと同様に、現時点では給与計算機能は提供していませんが、50種類以上のアプリケーションモジュールを用意し、ビジネスの成長に応じて容易にスケールアップできる(同時利用者数の制限がない)点が特徴です。ただし、ユーザー数の増加によって小型PCの処理能力を超えてしまう可能性があることには注意が必要です。ミニPCはRAMやディスクメモリに制限があるため、ユーザー数の増加に伴いパフォーマンスが低下することがあります。
OdooはZohoと類似したマルチアプリケーションパッケージで、提供されるアプリケーションの種類も似ています。より高度な機能や予測機能が必要な場合、QuickBooksなどの基本的なパッケージでは対応が難しくなるため、スケーラブルなアプリケーションスイートを提供するベンダーの検討をお勧めします。
例えば、Oracle NetSuiteはそのようなパッケージの一つで、一般的な財務機能を超えた能力を持ち、ERP(エンタープライズリソースプランニング)としてスケーラブルな機能を提供します。ほとんどのERPシステムはクラウドベースで動作するため、ミニPCでも予想以上に負荷の高いアプリケーションをサポートできることがあります。Microsoft Dynamics 365、Acumatica、Sage Intacct、Sysproなども同様の例です。
グラフィックソフトウェア
グラフィックソフトウェアをビジネスに不可欠なものと考えないユーザーもいるかもしれませんが、実際には多くのビジネスで非常に重要な役割を果たしています。最も頻繁に使用されるビジネス向けグラフィックアプリケーションの一つがPowerPointです。通常、PowerPointは単独で購入されることは少ないですが、LibreOfficeやZohoスイートを始めとする多くのオフィススイートには同様の機能が含まれています。ビジネス環境で使用されるグラフィックアプリケーションは、大きく以下のような種類に分類されます:グラフィック作成アプリケーション(Canva)、技術図面アプリ(AutoCAD、TurboCAD)、動画編集ソフト(Adobe Creative Cloud、Premiere、After Effects)、レイアウトや出版アプリケーション(Adobe InDesign、QuarkXPress、FlipHTML5などのフリップブックアプリ)です。また、画像作成やデザインソフトとしては、Corel Draw、Adobe Illustrator、Inkscape、GIMP(無料)などが利用されています。
プロジェクト管理ソフトウェア
ビジネスの複雑化に伴い、プロジェクトの進捗を追跡するためのプロジェクト管理ソフトウェアが必要となる場合があります。この用途に対応するアプリケーションは数多く存在します。Microsoft 365の契約者であれば、Microsoft Plannerを無料で利用できますが、より多くの機能を備えた有料プランも提供されています。その他にも、Monday.com、Workday、Asana、Jira、GanttPro、Zoho Projectなど、多様なプロジェクト管理アプリケーションが利用可能です。
ここで紹介したビジネスソフトウェアは、その一部に過ぎません。重要なのは、これらのアプリケーションのほとんど、そして他の多くのアプリケーションも、標準的なミニPCで問題なく動作するという点です。つまり、ビジネスを成功に導くために、必ずしも大型のタワー型PCは必要ないということです。
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